〜 店に使われている 木の話 〜
いらっしゃいませ


さて、今回は皆様にも親しみのある杉をご紹介します。
昔から「高いのも杉、安いのも杉」と言われる木ですが、日本人には最も馴染みのある木です。


喫茶 大工集団欅(けやき)






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(すぎ) 【Japanese ceder】

学名 Cryptomeria japonica D.Don
Cryptomeria は、cryptos(隠れた)+ meris(関節、部分)という意味です。
japonicaは日本のという意味で、これからもスギは日本特有のものであることがお判りになるでしょう。
原産地は、もちろん日本です。

日本特産種の木で全国に分布します。自生杉の分布は本州より以南ですが、植林杉は北海道の札幌近郊でも見る事ができます。
天然杉の産地としては、 秋田県の秋田杉 、屋久島の 屋久杉が有名です。
そして屋久島はスギの南限です。屋久島の屋久杉は3000年以上も生きています。
また、有名な林業地としては、 奈良県吉野、三重県尾鷲、静岡県天竜川流域、大分県日田、鳥取県智頭などがあげられます。

昔より杉は『安いのも杉、高いのも杉』と言われてきました。
杉は皆さんもよーく知っておいでると思いますが、銘木と言われる杉は1本でウン千万円もするものがあります。銘木と言われる杉はヒジョーウに高価なんです。杉をバカには出来ませんよ。
杢目も素直なものから、クチャクチャに曲がりくねっているものまであります。

太平洋岸に生息する杉は表杉と呼ばれ、種子からしか新芽が出てきません。中央の山脈を分岐点として、日本海側に生息する杉は裏杉と呼ばれて枝が垂れ下がり、地面に枝が触れた所から着地して根を下ろし、そこから新芽を出し独立樹に成長します。
表杉と裏杉とは性質が大きく違い、その用途も変ります。
共にとても用途の広い木で、日本の人工林の約7割はこの杉の森林です。
常緑高木で、高さは普通30〜40m、高いものは60m以上にも成長します。
土壌が深く、肥沃で適度の湿度があるところを好み、乾燥地には不向きです。
雌雄同株で、花は3〜4月頃に咲きますが、花粉をまきちらして最近は花粉症の原因として嫌われているようですがね。

材は、比較的軟らかく、加工や乾燥が容易でかつ一定の強度があるのが特徴で、建築用材として柱などに適しています。

用途としては、日本では昔々より柱、天井、内装等材、建築材として多く用いられました。しかし、現在では杉もバカには出来ません。柱材などは外材よりも高価で、杉の柱で家を造られるお客様はリッチです。杉の柱を使った家はなんとも優しい感じの部屋になりますよ。最近ではあまり使っていただけませんがね。
やはり日本人の感性は杉と欅の杢目に相当影響されてきたようです。
また、生活用具、例えば酒樽、折等も作られています(もっともこれらも今ではプラスチックですがね)。
葉は線香の材料になります。
また、縄文時代の丸木舟も杉で作られていました。
とにかく日本では昔から幅広く使われ、皆さんにはお馴染みの木ですよね。

またまた余談ですが『大工集団 欅』では、以前にたった5本の杉の木で家を造ったことがあります。
決して小さな家ではありません、87坪の家でした。お施主さんが山持ちで林業家でした。使った杉は5本とも胴周りで4周り以上(直径で約2m)、長さは1本が70尺(約21m)、2本が60尺(約18m)ありました。構造材(梁は除く)も仕上げ材も全てこのたった3本の杉の木で造りました。
その為、和室の長押等は木目がグルリと通った部屋に出来ました。

現在は中級品より下の材は、植林されているため市場にはありますが、外国材と比較して割高なためあまり人気がないのは残念です。
しかし、今でも高級材は突板(薄く剥いだ物を合板に貼ってある物)用材等に加工するための良材は不足気味です。(樹齢二百年前後のものです)

屋久杉のお話
屋久島の森において、ひときわ存在感を放っているのが屋久杉です。樹齢1000年以上という、その生命力に満ちた姿にひかれ訪れる観光客も多いそうです。
その屋久杉には、3種類あります。
1.本来「屋久杉」の名で呼ばれる杉の条件は、天然で、しかも樹齢1000年以上のも  のだけです。屋久島の杉は全部が屋久杉ではないのです。
2.樹齢1000年に満たない若い(?)スギは小杉と呼ばれ、正式には「屋久杉」ではあ  りません。
3.天然ではなく植林されたものは地杉といって区別されています。
屋久杉のなかでも、特に樹齢の高い長老級のものには、敬意の念を込めて固有名詞がつけられています。、紀元杉、大王杉、縄文杉といったものです。

← 左の木は【縄文杉】と名が付けられた屋久杉です。
樹高25.3m 根回り43.0m 胸高周囲16.4m 
確認されている太さ最大の屋久杉です。
背が低いずんぐりした樹形は、台風の常襲地帯に育つ屋久杉の特徴をよく表しています。
凹凸の激しい幹は木材に不向きとされ、江戸時代に利用できない巨木として切り残されました。
樹齢7200年という説もありましたが、中心部が空洞になっており、その内側から採取した資料の科学的計測値は2170年位となっています。
生命力に満ちたその姿は圧巻です。

屋久島の森を見て、本当によかったと思っています。自分の何十倍もの年月を生きている屋久杉には感嘆せざるを得ませんでした。特に、自分は苔に蒸した屋久杉が好きです。あの緑色の美しさは、言葉には表せません。
屋久杉というのは、それ単独で生きているのではなく、必ずといってよいほど他の植物と共生していました。というのは、一つの屋久杉には、数種類の植物が寄生しているのです。それに、数百年前に切り倒された杉の株から、新たな杉が育っている姿を目の当たりにして、大変感動を覚えました。
大いなる自然は日本にもあります。
人間には絶対作れない、自然がナガーイ歳月をかけて作り出した芸術ですよね。
屋久島が世界遺産に指定されたときには本当にホッとしました。
太古の森、屋久島。ここに生息する屋久杉を、また見たいと強く思います。
みなさまも、一度訪れてみてはどうでしょうか?

《巨樹については米松のページをご覧になってください。ビックリされますよ。》

当店では、秋田の能代杉を天井に鏡板として用いました。
これは帯戸の鏡板にするために用意してあった杉板を天井板としたものです。

帯戸とは周りに漆をかけ、しかも上下に一枚ずつの鏡板を入れた建具です。
現代では制作費が大変高価(約100万円)になるため、あまりご依頼がなくなりました。
もっとも鏡板の変わりにベニヤを入れ、漆の変わりに加州塗りとすれば安いのですが・・・。

当店では左の写真のような天井の鏡板と、玄関横の大きな表札として11枚を用いています。

これだけ大きな芯去りの板を取るには、直径が少なくとも2mはなくてはなりません。
杢目も綺麗でしょ。これが杉の醍醐味ですよね。
キッチンの天井の落とし掛けには京都の北山杉の搾り丸太を用いました。

この丸太は天然の搾りではなく、若木の時にプラスチックの型を巻いて育て凹凸が付いた物です。本来は床柱にする木です。
← 左の写真は事務カウンター横の棚板で能登の杉です。
赤みが大変に綺麗な杉で棚板とするには勿体なかったのですが・・・。
第一、杉のような柔らかい木は棚板には合わないのですが・・・。

さて、みなさん、ここは白山吉野です。
吉野には皆様に是非とも見ていただきたい杉があります。



「御仏供杉」 (おぼけすぎ) 国指定 天然記念物

← 当店より約500m金沢寄りに「吉野工芸の里」があります。その奥にご飯を山盛りにしたような樹形の御仏供杉は立っています。

杉の本来の形とはかけ離れ、幹の下から太い枝がたくさん出ている樹形から仏前に供える飯のようということで「御仏供」という名前がついたと言われています。

この木は建武中興の頃に大智禅師がこの地を去るときに杉を逆さに植えたと言い伝えられています。大智禅師はその際に「この木も生きついたら、自分の教えも本物で、仏法が盛んになるだろう」と言ったと言い伝えられています。
老木といえど、湧き出る不思議な力がみなぎった巨樹です。
是非、お帰りにご覧になってください。