木の話
木には、大きく分けると針葉樹と広葉樹があります。国内材の中で代表的な針葉樹は、スギ、ヒノキ、マツです。広葉樹は、ケヤキ、ナラ、センが有名ですよね。近頃、春になると花粉症に悩む人を、あちこちで見かけます。彼らは「スギを全部、切ってしまえ!」という過激なことを言う人もおいでます。それほど、辛いのでしょう。実は、僕の周りには花粉症の人が多いのです。でも、よく考えて欲しい。本当にスギだけが原因なのでしょうか。
スギは、大昔から日本にあるけれど、花粉症の被害はここ数年です。ある本に、排気ガスに含まれる物質とスギの花粉がくっついて、アレルギー症状が発生すると書いてありました。それなら、スギが悪いんじゃなく、大気汚染をなくすべきなのではないだろうか。
話を元に戻しましょう。針葉樹と広葉樹は、葉の形が違うと小学校で習いましたが、それ以上に大きなことは、成長にかかる時間です。一概には言えませんが、針葉樹が約50〜60年なのに対して、広葉樹は約200〜300年かかります。
森を守り、木を育てるというのは、たいへんなことなのです。
大昔地球が生まれて、冷えてきて、水が出現し、生物が生まれてきました。まず細菌が、藻類が、シダ類が、そしてその頃針葉樹が出現しました。動物では恐竜全盛の頃です。その後に広葉樹が出現しました。従って針葉樹と広葉樹では体の造りが違うのです。
針葉樹は、構造がとても単純で、加工がしやすい木です。そのため、住宅の柱や天井などに多く使用されます。最近では、針葉樹の合板が開発されて話題を呼んでいます。広葉樹は、夏目と冬目の成長の差が木目としてはっきり現れ、家具や建物の表面材として使われるものが多い木です。
重さも針葉樹の方が一般的には軽いと言われています。これは、木の細胞の穴に含まれる空気の量の差です。この細胞の空隙は同じ木でも育ち方により違ってきます。育ち方の悪い針葉樹は膜の厚い細胞が多くなり、重くなります。育ち方の悪い広葉樹は養分などを吸収する管ばかり増えて、スカスカの木にります。だから、どちらもちゃんと育ててあげないとダメなんです。
1本の木のなかでも、気候・水量・日照などの関係から、育ち方が違ってきます。性質にムラができ、腐り易さ・虫の食い易さなどが違ってしまう。健康に育っても場所によっては色が違ってくる。また、節があるところやキズがあるところもある。人間だって全身同じ色ってわけではないし、子供の頃の傷跡の一つくらいはあるでしょ。しかし、これを木に対して日本人は認めてこなかった。
アメリカでは、節がある・虫食いの痕がある・色が違うってことは生き物だからあたりまえだと考えて受け入れてきました。日本では一番上手に育ったほんの一部を使って、あとは捨ててしまうことが多い。そんなに揃った色や揃った木目が良ければ、木のプリントがしてある製品を使えばいいのにと思う。木の壁や木の家具は、人の心を落ち着けてくれます。木だからであって、木目が揃ってるからでも、色が揃っているからでもない。
なんでこうなったんだろう。日本では、日本的な几帳面さで、節が無く・きちんと色や目が揃っていないと気がすまない消費者が多い。そのため、建築や木材業界では、そんな上質な部分だけしか売れないと判断し、バカバカしいほどにオーバー・クオリティなものだけが流通するようになってしまいました。誰が悪いというわけでもないが、結局こういったことなんです。だから、これを直すには「節があってもいい。色や目が揃ってなくてもいい。木のぬくもりがほしい」と消費者の意識が変わることが必要なのです。
木材製品は、鉄・アルミ製品等に比べて、完成品になるまでのエネルギー消費量が少ない。鉄・アルミ製品は生産過程に於いて、たくさんの二酸化炭素と二酸化硫黄を排出し、かなりの燃料と水を必要とする。ちなみに、二酸化炭素は地球温暖化の原因の一つであり、二酸化硫黄は酸性雨の原因の一つです。
木材の場合は、伐採し製材するくらいで、ほぼ製品に近い状態になるため、燃料をあまり消費しないで済みます。そして、大事なのは、木は木材や木製品になった後でも、体内に二酸化炭素をストックしてくれることです。
木製品は再生可能で自然分解します。更に耐久性にも優れています。何世紀もの間、大切に使われた家具などがこれを証明しています。だから「地球に優しい」ということは、いい木製品を選び、大切に使い続けることなのだと思っています。