木材の樹種の選別方法
立ち木(株)・原木の樹種を判断するには、まず全体的な大きさや枝ぶり・葉の形と色・樹皮などから判断をします。また花が咲いたり実がなったりする種類であれば、それらは大きな判断材料となります。そして、その木が生えている場所や地域、あるいは紅葉などによる季節の変化も大きな目安となるのです。最近では山歩きや森林浴用に、樹種を判断する為の木や葉・実・花などの写真や絵を掲載した図鑑なども多く出回っていきています。素人でもある程度の判断は可能になり、それらを気軽に楽しむ事ができるようになりました。
しかし、その木が伐採され、製材された状態であったらどうでしょうか。あるいは内装などでフロアーや壁に使われている場合、あるいは家具などの商品になっている場合はどうでしょうか。
そこで今回は、木材(製材して板状にしたもの)や突板を、プロが如何に判断するか、その方法を少し説明してみようと思います。
木材や突板の場合、同じ樹種であっても一本一本すべて違う木目や色をしています。またややこしい事に、ある木材に似ている別の樹種の木材をその木材の代替品として使うことがあったり、別々の種類のものを別々の種類として扱っているにもかかわらず、どうやってどこから見ても全く見分けがつかないというものもあります。本当にそっくりなものが３種類ぐらい並んでいてるのだが、それら３種類は別々の名前を持つ、別々の種類の材である、という本当に頭を悩ませる種類もあるのです。これにはプロといえども相当の年季が要ります。
樹種を判別する方法は、ほとんどの場合目で見て、その木目・色等で判断をします。それだけでは判らない場合は、手で肌触りをたしかめ、香りを嗅いでみます。例えばヒノキとヒバの場合、見た目では分からなくても香りを嗅いでみればすぐに判るのです。ヒバの方がヒノキよりやわらかい香りがします。それでも判らない場合は、「なめてみる」。といっても食べ物の味見をするように舌で木の味を確認するわけではありません。本来は水で少し濡らしてみて、木目を浮き出させて判断をするのですが、中には水をわざわざ持ってくるかわりに、自分の舌でなめて木目を浮き出させるという人もいます。まさに五感をフルに使って判断をするのです。何故そんなにまでして樹種を判別するかといえば、似ていても性格が違うため用途が違うからです。皆さんは樹種によって金額が違うからと思われるでしょうが、日本は木の文化が発達した(発達していた？)国です。
職人は樹種の性格を生かして適材適所に用いて来ました。その為、どうしても正確な樹種を知る必要がある(あった)のです。諸外国でこれだけ樹種にこだわる民族はいません。ですから法隆寺のような千年を越える木造建築が造れるのです。
と、ここまでは生(キジ)、つまり無塗装の場合の話ですが、着色し、塗装をしたものを判別するのはプロでもとても難しいのです。着色したものの判別には経験と勘、応用力が必要で、それらを駆使して樹種を見極めています（が、それでもぜんぜん判らない時がある）。
現在私は木材やツキ板の樹種においては、体外一度見れば覚える事ができます。子供の頃から木材に接してきた事もあってほとんど苦労なく身についてしまった勘です。また、私達の先輩でも「達人」に近くなると、一度見た木材・ツキ板は、樹種としてではなく、１本１本の種類として覚える事が出来る人もいるのです。つまり、ケヤキの板目材を一度検品して見たとすると、後日、半年後や１年後にまた出会った時に、「これはいつ何処で見たケヤキ材だ」というように覚えているのです。
以前、当方に建築デザイナーの方が見学にみえた事がある。その時、彼らが樹種を覚えるのに、学生時代の英単語を覚える時に使っていた単語帳に、樹種の名前と切れ端をつけて覚えようとしていました。彼曰く「なかなか覚えられなくて。少しでもサンプルと違うと判らないんですよ」と言っていた。そういえば、自分も学生時代、同じやり方で英単語を覚えようとしてもなかなか頭に入らなかった覚えがある。
一部分だけを覚えて、全体を理解する事は難しい。やはり実体験で、現物を実際の大きさで何枚も何種類も見て触れた方が記憶に残り、応用力も自然とついてきます。木材の樹種を覚えるには、まず、実際に見て触れて、香りを嗅いで、たまには味わってみて(？)、体験してみる事をおすすめしたい。
※注 ： まれに人によってはかぶれる木材（マコレ、シルキーオーク等）もあります。
注意してください。
