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倉庫から屋根の部材を運び出している写真です。
乗せているのは母屋です。1本の長さが約8mあります。2本で1組の母屋になります。
屋根の部材は壁や梁の部材とは全く加工が違います。梁材にはホゾやアリ、鎌欠等の加工がしてあります。材と材の接合部分は平に加工、その他にも種々の加工がなされています。
素人さんには残酷ですが、これらの加工は無理です。屋根だけはプロに依頼した方が良いでしょう。

雪が融け始めました。待ち遠しかった春です。
屋根を造り始める時がきました。

屋根は雪のある冬の間に倉庫で部材の加工をしていました。

この年ほど春が待ち遠しい年はありませんでした。
ログを造り始める以前は『春を待ちわびる』なんて事はありませんでした。
春の有り難さを知るには冬の厳しさを知らなければならないのでしょう。

この年も冬将軍は来ました。組み上げた1階部分のログは雪をかぶって凍えそうです。
前年は5段だけ積んだのでログにシートを掛けたのですが、ここまでになるとシートを掛けるわけにはいきません。ログには申し訳ないが、ガマンしてもらうよりしょうがありません。
雪をかぶったログを見るたびに自分まで凍えそうに寒くなりました。

話を現場に戻しましょう。

どうにかクリスマス前に1階のログ組が終わりました。
この年は夏でも雨の多い日が続き難儀しました。
そこで、縦20m横30mの大きなシートを購入して真ん中をクレーンで吊り上げた即席の木造り小屋の下で仕事をしました。
これは便利なものでした。仕事が終わった後はクレーンのシートをおろせば材料は雨に濡れません。翌日はまたクレーンを持ち上げるだけで仕事場となりました。
加工前の丸太が濡れていると塗装が出来ず、そうすれば積めず・・・・。このシートはそれをも解消してくれました。

さぁ、ここまで来たら後は雪が降る冬の間に屋根組の材料を倉庫で加工するだけです。

ログを造るには当然種々の道具が必要になります。
私が買い求めた道具を書いてみましょう。
 ・クレーン車
 ・軽トラック
 ・ワゴン車
 ・チェンソー (バーの長さが600、500、450の3台と、曲切りバー等の付属品)
 ・曲面カンナ、平カンナ、丸鋸(大小2台)、グラインダー(大小2台)、ドリル(大小2台)、臍切り、圧縮機、インパクト、等の電動道具。
 ・ノミ(15,20,30,33mm)、カンナ(75,60mm、面取りカンナ)、げんのう(大小)、鋸切り(両刃、片切)、ドリル刃(6,9,10,12,15,18,20,21,24,30mm)、木廻し、等の手道具。
 ・ヘルメット、安全靴等の装備品。
 ・その他にも塗装道具など種々の物を購入しました。



私はログを造るに当たって一つの工法を考え出しました。
それは【鎌欠】という工法をログに応用したものです。(興味のある方にはお教えしております)
その工法を用いるために治具も考え出しました。その治具を書きます。
・トング(長短2台)、上下治具(大小2台)、サイド治具(大小2台)、平面加工治具、穴あけ治具、等です。
これらは自分で考え出した物で、鍛冶屋さんに作ってもらいました。

道具を買うときの秘訣は安物は買わないということです。
切れ味の悪い刃物は仕事が雑になりますし、切れないために仕事が嫌いになります。第一危険です。
素人なのだからと言って安い道具を使えば、仕上がりも落ちますし、仕事の能率が落ちます。

現場の話は少しお休みして丸太の買い方についてお話ししましょう。

上の写真は富山県の新湊の貯木場です。
手前に切断した丸太がありますが、切断前は長さが12m物でした。太さは小口(木の細い先の方)の寸法がφ380〜420mm(梁材はφ400〜480mm)の物を使いました。

皆さんは『丸太はどこへ行けば買えるんだろう?』と思っていることでしょう。雑誌や書籍にはいろいろ書かれていますが、単純な話、丸太が積まれている材木屋さんへ行けば買えるのです。
但し、町の材木屋さんでは高価となります。国内で買うなら一番安いのは輸入業者から買うことです。
それより安いのは、ダグラスファーならばカナダへ行って買い付けることです。でもその丸太を日本まで運んだり、税関の問題、検疫の問題を考えると個人輸入は割が合いません。やはり輸入業者から買った方が得策でしょう。
しかし、ほとんどの輸入業者は個人には売ってくれないと思います。でも、そこはログに対する熱意を話して売ってもらうのです。 親身になってくれる業者は必ずいます。
その点、私はラッキーでした。親切な業者と知り合い、現場での加工を容易にするために土場(貯木場)で2本に玉切り(切断)してもらい、しかも外皮まで剥いてもらって搬入しました。
外皮を剥いてもらったのは大変助かりました。 ダグラスファーの外皮は硬く、厚みは3cmくらいもあります。これを現場で剥くのは大変で、時間もかかりますし、大量の屑が出て処分にも困ります。内皮だけでも大量に出て、燃やすのに苦労したのですから。
それ以上に助けられたのは丸太の小口(木の細い先の方)の寸法が380〜420mmの丸太をそろえてもらったことでした。本来ダグラスファーは20本セットで1筏として輸入されます。その中にはφ180の物、φ240の物、φ320の物、・・・・・と大小の丸太が入っています。その中から380〜420mmの丸太を抜き出して揃えてもらったのです。
コレは書けば簡単なことなのですが、現実には大変なことなのです。山になっている丸太から指定された丸太を選んで取り出すだけでも大変ですし、筏の輸入伝票を全て作り直さなければなりません。 このような面倒をおかけしました。
こうしていただけたのは業者さんから「ログハウスを造るのなら、丸太の寸法が揃っていた方が造りやすいだろう?」と言っていただけたからなのです。本当に助かりました。
私はこの業者さんを知りラッキーでした。

一階の梁下まで10段のログを積みました。
これから梁を加工して積まなければなりません。今までは同じ加工をしたログでしたが、梁の加工は少し違います。 見せる梁ならば下部は丸にしなければならず、加工が難しくなります。
この時点で10月の初めでした。雪が降るまでのあと2ヶ月で一階部分のログを積み終わりたいと思います。
雪が降り、外の仕事が出来なくなったなら倉庫の屋内で小屋部分の部材加工をして、雪が融けた春からは小屋組をしたいからなのです。
さぁ、あと2ヶ月で1階が造れるかどうか。

少し建物の格好が想像できるようになりました。
窓が入る部分はログを積まずにどんどん積んでゆきます。
厳密に窓寸法を残してログの加工はしません。少し長めに加工して、窓を取り付けるときに一気にチェンソーで切り落とした方が綺麗に納まります。

軽トラックには特注の棚を取り付けて道具を一式積んでいます。これは大変便利でした。先に造っておいたガレージに道具を積んだまま軽トラックを入れておき、仕事をするときにそのまま仕事場まで乗ってゆくのです。
一々、道具を取りに行くのは大変です。是非お考え下さい。

丸太は筏買いをしました。一度に40本の丸太を現場に運び加工しました。
使用した丸太はφ300〜380mmの12m物が420本でした。
これは建物の大きさの割には多いのですが、全ての間仕切りもログで造ったからです。

さぁ、雪が融けました。

ログだ。ログを造るぞー!!

上の写真のログ左側に煙が上がっているのが見えるでしょうか。
これは今では考えられませんがログの皮や端材を現場で燃やしていたからです。
でも、この廃材処理は考えておかなければならない事です。ログの皮むきをして出た屑は想像を絶するくらいの量だからです。私は今ほど廃材処理がうるさくない時に造りましたから現場で燃やしていましたが、今は処理業者に依頼することになるでしょう。

5段まで積んだところで雪が降りました。
写真では見にくいのですが、ログ全体にシートをかけて越冬しました。
春になって雪が解けるまでログはお休みです。
その間に本業をたーっぷりしなくては・・・・・。

朝8時から夕方暗くなるまで毎日行ってきたログ仕事ですが、雪が降り出来なくなると生活パターンが変わり身体まで不調になりました。
それもそうで、ログを始めるまでは机仕事をしてきたため身体を動かすことがなく、ログを造り始めて体力仕事をするようになったのです。おかげで体は丈夫になりました。

ログが積み重ねられると当然ながら仕事はどんどん高くなります。
その分、危険になってきます。 一人でするときには万全の注意が必要です。
些細なことですが、服装にも注意が必要です。 チェンソーを使いますからダボなズボンは引っかける可能性がありダメ、ログが加工廼り落ちるかもしれません、靴はつま先に鋼鉄が入った安全靴を履きましょう。

ログ積みにはクレーンが必要です。
ログは意外と重く、φ300mmのログだと長さが1mでも持ち上げられません。
クレーンはブームを延ばせば倒れる危険があります。無理をせずに細かな移動をしましょう。

信じられないかもしれませんが、私はほとんどのログを一人で積みました。
コレを可能にしたのは考え出した特注のトングを作ったからでした。
でも、出来るなら一人でのログ仕事は危険ですからお止めになった方が良いでしょう。

壁のログを積むときの注意点を書きましょう。
その前に、勿論図面が出来ているはずなのですが、それが完全なものかどうかが問題です。
例えば、通しボルトの位置が明記されている事は当然ですが、電気配線の位置が明記されているか、床・天井の組み方が明記されているか等です。
電気配線の穴を忘れてログを組んでしまうと配線できません。
また、床や天井の組み方を考えずにログを組むとそれらの施工時にログの欠込みをしなければならなくなり困難となります。
これらを前提に注意点を書きます。
 
 1. ログの加工寸法(特にノッチ間の寸法)は正確に。
 2. 加工したログは全体を防腐処理(塗装)する。
 3. 加工精度は厳密に。
 4. ログ積みの建てり(垂直)を正確に。
 5. もったいないからと言って駄目なログは使わない。

これくらいのものです。難しくはないと思われるでしょう。

シル・ログを組んだなら後はどんどんログを加工して積んでゆけば良いのです。
但し、この加工にも注意がいります。






大工集団 欅(けやき)